光が曲げられた
Cluster MACS J1206_2-0847
2011.10.13
 Cluster MACS J1206_2-0847(MACS 1206)は,地球から45億光年離れた銀河団てある。これは,2011年4月〜2011年7月にハッブルの高性能カメラおよびワイドな組立カメラで撮られたものである。
 銀河団は,私たちの銀河系のような銀河同士がお互いの重力で引き寄せられ合って集団を作っている場所である。
 この写真には,曲がりくねった光の帯のようなものや,いびつな形をした銀河が写っている。これは,現代の科学では観測出来ない暗黒物質と言われるものの重力によって,光が曲げられているからである。レンズと同じように、銀河や星の重量も光を曲げるのである。

 これらの重力による弧状のものの位置を分析することで,銀河団内のダークマターの分布を推定し,巨大な銀河集合体が形成され始めた時期を推測していく。これが,ハッブル宇宙望遠鏡調査の目標のうちの1つである。
 
参考資料
BSフジ ガリレオX『暗黒物質の謎』より
2012年6月26日(日)朝 8:00〜8:30 放送
 宇宙が原子で作られているという20世紀の常識が覆った! 実は原子で出来ている私たち人間や空に輝く星たちは,そのすべてを集めても宇宙の5%に満たないという。では,宇宙は一体何で出来ているのか? それは決して見ることはできないが「確かにある」ことが分かっている謎の存在,暗黒物質。正体不明のその存在は,実は宇宙の形成になくてはならないものだった。番組では,ベストセラー「宇宙は何でできているのか?」の著者・村山斉IPMU機構長を始め,世界の最先端を行く研究者を取材。岐阜県神岡町の地下1000mで行われている暗黒物質を捉えるプロジェクト,宇宙全体に分布する暗黒物質の地図作りなど,宇宙の謎に迫る研究を紹介する。
 
万物は原子からできて“いない”?
 万物は原子でできているという常識が覆された。実は宇宙において原子の占める割合は5%に満たないのだという。では,宇宙は何で出来ているのか? 東京大学IPMUの村山斉機構長は「目に見えず,重力を持つことはわかっているが,具体的な正体は皆目わかっていない暗黒物質が宇宙の23%をつくっている」と語る。
 
重力レンズ効果が明かす暗黒物質の姿
 見ることのできない謎の暗黒物質。東京大学IPMUの高田昌広特任准教授は,暗黒物質の分布地図をつくる研究を行っている。その手がかりは,暗黒物質の持つ重力。暗黒物質が天体からの光を屈折させる“重力レンズ効果”を引き起こし,その姿が浮かび上がるのだという。暗黒物質の地図から見えてきたものとは?
宇宙の構造形成に深く関わる暗黒物質
 暗黒物質が,私たちの住む現在の宇宙を作るために重要な役割を担っていたということもわかってきた。世界で初めて宇宙最初の星が誕生する瞬間をシミュレーションによって再現した,東京大学IPMUの吉田直紀特任准教授は,暗黒物質が存在しない宇宙をシミュレーションすると,現在のような宇宙の構造は生まれないと指摘する
 
暗黒物質を捕まえろ! 地下1000mからの挑戦
 目には見えないけれども,私たちのまわりを常に飛び続けているという暗黒物質。岐阜県神岡町にある東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設では,エックスマスという装置を用いて暗黒物質を検出する試みが行われている。この装置が設置されている場所は,なんと地下1000m。宇宙線や様々な物から発せられる放射線の影響を限りなく少なくする事が実験の鍵なのだという。東京大学の鈴木洋一郎教授は,「砂浜に埋まったダイアモンドを探すようだ」と暗黒物質検出の難しさを表現する。
 
宇宙の誕生を再現して暗黒物質を作る
 宇宙の誕生時の状態を再現し,暗黒物質を人工的に作り出そうという研究が,スイスの世界最高のエネルギーを持つ大型加速器で進められている。この研究に携わる高エネルギー加速器研究機構の野尻美保子教授は,加速器で陽子と陽子をぶつけたときに起きる“偏り”をみつけることが実験の鍵を握るという。
 世界最先端の科学者たちは,暗黒物質の正体の解明にどれぐらい近付いているのか?
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